健康寿命70年時代と言われていますが、健康寿命に大きく関わる『ロコモティブシンドローム』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「あれ?片足立ちで靴下が履けないな」
「こんな畳のへりでつまずいちゃった」
「ペットボトルのフタがうまく開けられなくなった」
など、歳を取ってくると、日常のちょっとしたことができなかったり、些細なところで転んでしまったり、そんな小さな「あれ?」が増えてきて、身体の衰えを感じることが増えてきます。
それは、もしかしたら『ロコモティブシンドローム予備軍』かもしれません。
ロコモティブシンドローム、通称『ロコモ』は、健康で楽しく長生きしたいこれからの日本人なら知っておきたいことの一つです。
『ロコモ』って一体なんでしょう?
今回は『ロコモ』を意識することで、人生を長く楽しくする秘訣をお伝えしていきたいと思います。
目次
ロコモティブシンドロームとは?
骨、関節、筋肉などの運動器の動きが衰え、暮らしの中の自立度が低下してしまうと、介護が必要になったり寝たきりになったりする可能性が出てきます。
そんな運動器の障害のために、要介護になる可能性の高い状態が『ロコモティブシンドローム』です。
昨今、ご存知のとおり日本人は大変長生きになってきましたが、この運動器の障害、つまりはロコモが健康寿命を脅かしているのです。
「平均寿命」と「健康寿命」の違いとは?
人生100年時代と言われていますが、誰も皆、できれば元気な状態で楽しく過ごしたいですよね。
そんな中、日本人は今、健康寿命は70年と言われています。
あれ?日本人の平均寿命って80歳を超えていなかったっけ、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
はい、違います。
よく一般的に聞くのは、「平均寿命」ですよね。
「平均寿命」とは、0歳児における平均余命のこと。0歳の子が、だいたい平均してこの年齢まで生きることができるだろう、というのが一般的に言われる平均寿命なんです。
それに対して「健康寿命」とは、介護を受けたり寝たきりになったりせずに、自立して生活できる期間のこと、つまり元気で健康に過ごしている期間のことを健康寿命と言います。
明治時代の男性は平均寿命が43歳だった!?
こんな人口統計データがあります。
明治時代の日本人の平均寿命のデータなのですが、もう驚きです。
男性の平均寿命はなんと43歳、女性は49歳だったんですって!
明治時代に日本人の平均寿命が40代だったなんて信じられません。
1891年のデータとして44.3歳ですから、ほんの130年ほど前のことです。
当時は乳幼児死亡率が多かったため、それがかなりデータを押し下げている要因でもありました。14歳以下の年齢のデータを抜けば、実際の大人はおよそ60歳前後が平均寿命だったと言われています。
それにしてもやはり現在の平均寿命は男女共に80歳を超えるわけですから、明治時代から比べると30歳以上平均寿命が延びているわけです。
この130年で30歳以上も平均寿命が延びたわけですが、それにより新たな問題も起こっています。
平均寿命 − 健康寿命 = 要介護期間?
平成25年度の統計によりますと、
男性の健康寿命は71.19歳
女性の健康寿命は74.21歳
でした。
そして、
男性の平均寿命は80.21歳
女性の平均寿命は86.61歳です。
「平均寿命」が予想される平均的な寿命。そこから元気で過ごす期間「健康寿命」を引くと、介護や寝たきりの状態である期間が算出されます。
「平均寿命」−「健康寿命」を計算すると、出てくる数値は以下の通り。
男性9.02歳
女性は12.4歳
つまり、男性も女性も平均して10年前後、介護を受けて過ごす可能性が高いということになります。
いやいや、なるべく家族の負担をかけずに、介護を受けず、元気で過ごしたいですよね。
介護のお世話にならずに健康に過ごすためには、一体どうしたらいいのでしょうか?
ロコモが要介護になる大きな要因に
ここでロコモの登場です。
ロコモは介護になってしまう要因の一つとして挙げられています。
筋肉が弱まったことが原因で転び、怪我をしたために要介護や、要支援になってしまったという報告が、実際多いのです。
例えば、平成19年国民生活基礎調査によりますと、
『健康寿命を短くする要因』の中で、
要介護になる要因として、「骨折・転倒・関節疾患」が「認知症」「老衰」の次に多く17%と報告しています。
要支援となる要因としては、「老衰」「脳卒中」と並びなんと33%と、「骨折・転倒・関節疾患」がが全体の3分の1を占めているのです。
骨、関節、筋肉などの運動器の動きが衰えたことから、要介護や要支援状態になってしまった人が、想像以上に多いということがデータから見てとることができますね。
日本政府も後押しするロコモ対策
平成25年に、当時の秋葉厚生労働副大臣がロコモティブシンドローム対策について会見発表しています。
概要をざっとまとめるとこんな感じです。
『日本政府は『日本再興戦略』の中で、「健康寿命を1歳以上伸ばす」という目標を掲げました。「健康寿命」を延ばすためには「ロコモティブシンドローム対策」も重要な要素の一つです。
ロコモは年齢とともに運動機能が低下し、自立度が低下すること。自立度が低下すれば介護が必要となる可能性が高くなります。この介護の期間を減らすことで国民全体が健康になり、結果として介護が必要となる国民の割合を減らすことを目標としています。そのために、食事や禁煙に加えてまず毎日、そして今よりプラス10分間体を動かすことを心がけましょう
政府はこの平成25年を健康長寿のための予防元年と位置づけ、健康寿命の伸びが、平均寿命の伸びを上回るように、ロコモ対策に力を入れています。
高齢者の外来患者数の3分の1がロコモ由来
高齢者が病院の診察に訪れる理由にロコモ由来、つまり運動器の障害による外来患者数もとても多いのです。
『年齢階級別、傷病分類別外来患者数』(2011年公厚生労働省調査)によりますと、
60歳を超えたところから、筋肉や関節を傷めたり、骨折や外傷を負ったりした外来患者が一気に増えてくるのです。
これはロコモティブシンドロームからくると見られており、体幹や足腰の筋力が衰え、バランスが取りづらくなることによる、外傷が増えている、ということなんです。
そしてちょっと転んでしまった、など怪我から始まって、筋肉がさらに衰えてしまい、そのまま介護生活に突入するというのも、よく聞く話です。
要支援未満の人でも、体力が衰えてきたと感じれば、ロコモ予備軍です。
普段から、ちょっとつまずいた程度、ととらえず、介護生活にならないためにも、転びにくい体、そして転んでも骨折しにくく、骨折してもまた歩ける、そんな体にしていきましょう。
ではどのようにして筋肉を鍛えたりバランス感覚を磨いたりすればいいのでしょうか?
ロコモティブシンドロームのチェック
まずは、ロコモの予備軍かどうか、チェックしてみましょう。
- 2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(例えば1リットルの牛乳パック2個程度)
- 家の中で、ちょっと重い仕事が辛い(掃除機の使用や、布団の上げ下ろしなど)
- つまずいたり、滑ったりしたことがある
- 15分くらいつづけて歩けない
- 横断歩道を、青信号で渡りきれない
- 階段を上るのに、手すりが必要である
- 片足立ちで靴下が履けない
この中で一つでも当てはまれば、筋肉やバランス感覚が低下している心配があります。
今からロコモ対策をとって、予防していきましょう。
ロコモを予防するトレーニング法
ロコモの予防法として、推奨されているのは『片脚立ち』と『スクワット』です。
《片脚立ち》
まず片脚立ちを左右1分間ずつやりましょう。
・床につかない程度に片足を上げます
やることはこれだけです。
ゆっくり1日3回行ってください。
支えが必要な人は十分注意して、机に手や指をついて行いましょう。
姿勢をまっすぐにして行なうことがポイントです。
《スクワット》
それからスクワットです。
1.肩幅より少し広めに脚を広げて立ち、つま先は30度くらい開きます。
2.膝がつま先より前に出ないようにし、また膝が足の人差し指の方向に向くように注意してお尻を後ろに引くように体をゆっくり沈めます
3.深呼吸するペースで5,6回繰り返します。
ポイントは椅子に腰掛ける感じでゆっくりとやることです。
スクワットが難しければ、椅子に腰掛けた状態から、机に手をついて立ったり座ったりの動作を繰り返すことでもOKです。
国の推奨は、1日10分からということですし、これくらいの内容なら、簡単にできそうな気がしますね。
ぜひ日頃の習慣としてつづけていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
自分の人生を最後まで、少しでも健康な状態で楽しむためにも、ロコモ予防を意識していきたいですよね。
ロコモ対策のトレーニングはとても簡単。
政府の推奨は、一日10分ですから、これならやれそうな気がしませんか?
1日10分で、人生を長く楽しく過ごしていけるなら、やってみる価値があるのではないでしょうか。
健康寿命を70年と言わず、80年、90年と延ばして、元気に生活していきたいものですね。
運動器は、自分の意思で動かすことができる唯一の器官です。
自分の寿命は自分で伸ばすという意識を持って、今日からロコモ対策をして、1日でも長く健康で元気な人生を送っていきましょう!